monthly Magic Lesson FAQ

monthly Magic Lesson(マンスリー・マジック・レッスン) より、皆様に最新情報などをお伝えして参ります!

佐藤 大輔

サタデーナイトマジック感想その2

こんばんは。
佐藤です。

本日も昨日に引き続き、サタデーナイトマジック第二十夜の感想を書きたいと思います。

*****

トラベラーズの後は、「ハンカチに通うコイン」(monthly Magic Lesson Vol.6参照)を演じました。

これは、数年前「ともの会EX発表会」でも演じたことがありましたが、何度やっても難しい手順です。基本的には3枚のコインが1枚ずつ飛行する現象ですから、1枚ずつに変化をつけないと単調になってしまいがちです。

今回は、トラベラーズを演じた後に、「袖を使っていると怪しまれる方がいらっしゃいますが、実際に『袖を使う』ということがどういうことかお見せしましょう」というセリフでつなげましたので、3回とも袖を伝ってハンカチに通うという演出にしました。

*****

そして、最後はカップ&ボールで締めました。基本的にはバーノンの手順の流れですが、時間と練習の進捗状況の都合で、ウソのタネ明かしの部分を省きました。その結果、ポケットワークを一切省いた上で、クライマックスでレモンを1個出現させるという手順になりました。

これも昨年11月の「ともの会EX発表会」で演じたことがあるのですが、やはり難しい手順です。カップの示し方や示し方の順番、そしてカップ3個、ボール3個、ウォンドというたくさんのプロップをまごつかずに扱う方法などまだまだ練習が必要だなと思いました。

ただ、一般的なロード方法とはちょっとタイミングをずらして行いましたので、何人かの方からは気づかなかったという言葉をいただけたのが幸いでした。

*****

こういう風に振り返ると反省点が次々と出てきて、あぁここを直した上でもう一度自分のベストの演技ができるようになりたいなと思うわけですが、実際に出るとなるといろいろ考えすぎて、あーもう出たくないよとなってしまいます。まだまだ、これからも精進しないといけないですね。

最後になりましたが、今回来てくださったお客様は非常にあたたかいお客様ばかりで、楽しく演じることができました。本当にありがとうございました。

*****

さて、今回は庄司タカヒトさんが都合で出演できず、結果的にゆうきともさんと2人で行うことになりました。順番としては、ゆうきさん→わたし→ゆうきさん、の順だったわけで、ゆうきさんの演技は準備でどきどきしながら前半を見て、後半は自分の演技が終わって冷めやらぬ興奮の中見たのですが、さすがゆうきさんという演技でした。

個人的には、めったに見られないポケットリングの演技を見ることができたのが良かったです。

他にも、mMLで紹介している手順からお試しのネタと思われる手順まで、カードマジックを主体に、リングやロープの手順も入っていて、かなり贅沢でした。

ゆうきさんがいかに素晴らしいかはわたしが言うまでもないので、あとは実際に足を運んで生の演技を楽しんでいただければと思います。

このサタデーナイトマジック(その他ゆうきさん・庄司さん主催のイベント)は、はじめてクロースアップマジックというものを見る方にもぴったりだと思います。

もちろん、お一人でご覧になるのも結構ですが、マジックをしない方も呼んで絶対に損はないショーです。まだ一度もご覧になったことのない方は、ご家族・ご友人をお誘い合わせの上、ぜひ一度お越しくださいませ。(はじめてマジックを見るというお客様が多ければ多いほど、演者は気合いが入りますしね!)

*****

「サタデーナイトマジック」

【日程】毎月第3土曜日

【場所】東京都北区中里1-4-6-304 (JR駒込駅東口徒歩3分)

【時間】19時開場、19時15分開演

【参加費】1,500円

【出演】 庄司タカヒト・ゆうきとも他(毎月出演者は異なります)

サタデーナイトマジック第二十夜終了!

こんにちは!
佐藤です。

先日「サタデーナイトマジック」に出演させていただきまして、無事終了いたしましたので、そのことについて少し書きたいと思います。

出演したものをレポートするというのはなかなか難しく、本番前は緊張していて、本番中はもう無我夢中で余裕もなく、本番後は反省点ばかりが頭をかすめてしまいます。

自分の至らない点を書き出すときりがないですので、実際に演じた演目についてのお話をしたいと思います。

まず始めは、絵ハガキを使った一致現象を演じました。現象としては、10枚の絵ハガキを裏向きのまま、観客の指示にしたがって順番を変えていきます。その10枚の順番が、あらかじめずっと見えるところに置いていた絵葉書10枚の順番と完全に一致しているというものです。

以前に別の手順で絵ハガキを使った手順を演じたこともありましたし、10人くらいのサロンのような状況だとカードよりも遠目が利くので道具としては悪くないと思います。何よりわたしが絵を見るのが好きなので自分らしさも出せますし。

最後に一致するところの見せ方は、予言のものも、観客に順番を変えたものも、それぞれ小型のイーゼルに立てかけた状態で並べて示しました。この2つ並んだイーゼルの上にある、2枚の絵ハガキが全くいっしょであるという「画」が何とも言えない心地良さがあり、ここがやりたくて、逆算して手順を作りました。

マジックではあまり使われない道具立てなので結果的には、ツカミとして功を奏したようです。終わった後、「絵ハガキのマジックが印象的でした」というお言葉もお客様からいただけました。「マジックには、イモーショナル・アピール(感情に訴えかけるもの)が必要だ」と言ったのはダイ・バーノンですが、わたしのようにストーリーでそのアピールをするのが苦手な人は、使う道具でアピールしてはいかがでしょうか?

*****

その後は、「トラベラーズ」というマジックを行いました。これは、デックの中にばらばらに戻した4枚のエースが、上着やズボンのポケット4ヶ所からそれぞれ現れるというバーノン原案のマジックです。

今回の演目で難易度的には一番難しいもので、本来やるつもりはなかったのですが、ゆうきともさんにリクエストをいただいたので、2年半ぶりに演じました。

このマジックは「ミスディレクション」がキーとなっており、ダイレクトなアプローチとワンアヘッド(ワンビハインド)との組み合わせで成り立っている非常に巧妙なマジックです。

ミスディレクションの名人であるジョン・ラムゼイの唯一の弟子、アンドリュー・ギャロウェイも本で書いていますが、フィジカル・ミスディレクション(心理的なミスディレクションではなく、視線の操作など身体的なミスディレクションのこと)を効果的に行うには、まずセルフワーキングトリックなどなるべく技法を使わない手順を行いつつ、観客に演者とのアイコンタクトに慣れてもらった上で、技法を使ったマジックを行うのが良いとされています。それを意識して、まず難しくない絵ハガキの手順を最初に持ってきたのは良いですが、緊張してあまり全体のお客様とのアイコンタクトを行いながらしゃべるということができなかったのが反省点です。

また、手順も2年半に行ったマニアックなハンドリングのまま行いまして、本当はもう少しすっきりさせたかったのですが、直前でリクエストされたこともあり、下手に変えるよりは、という思いでそのまま演じました。

今回演じてみて、あらためて原案の素晴らしさが分かりました。原案は技術的ではない部分で難しく感じた部分があったのでちょっと変えたのですが、原案にはくどさを感じさせない絶妙なバランスがあるのです。もう一度研究し直そうと思いました。

*****

と、演目について書き出してもきりがないことが分かりましたので、残り2つの手順については、また明日もっとあっさり書きたいと思います。

サタデーナイトマジック第二十夜

こんばんは!
佐藤です。

今月21日(土)開催のミニマジックショー「サタデーナイトマジック第二十夜」に出演させていただくことになりまして、若干ですがお席が残っているということですので、告知させていただきます。

東京近郊の方で、ゆうきとも氏、庄司タカヒト氏のマジックを存分に味わいたい方、今週の土曜日に空いているという方はぜひ!

お問い合わせは、 info@magiclesson.jp までお願いします!

*****

「サタデーナイトマジック第二十夜」

【日程】2012年1月21日

【場所】東京都北区中里1-4-6-304 (JR駒込駅東口徒歩3分)

【時間】19時開場、19時15分開演

【参加費】1,500円

【出演】 庄司タカヒト ゆうきとも 佐藤大輔

12月に読み終わった本

こんばんは!
佐藤です。

ようやく今月読み終わった本に追いつきました!

【Half A Dozen Hummer by Bob Hummer (1940)】
IMG_0047天才ボブ・ハマーの作品集です。

“Half A Dozen”の名の通り、解説されている手順は6つです。ただ、わたしはオークションで入手したのですが、別原稿でもう1手順の解説書が付いていました。
元々、この冊子に付属しているものなのかは不明です。

このボブ・ハマーという名前、今では数理トリックを解説した本などではいわゆるパリティー・プリンシプル、CATOなどとともに必ずと言っていいほど登場します。

また、他にも“Mathematical Three Card Monte”(mML Vol.45でもご紹介しています)も有名な彼の作品です。

さらには、カードをスピンさせながら投げると、浮揚したまま体の周りを回転するという有名なトリックも彼の発明と言われています。

本書では上記の原理を使った有名な“The Magic Separation”、“Face Up Prediction”から始まり、
数理を使わないものもいくつかありますが、どれも技法をほぼ使わないものばかりです。

あまり詳しくは知らないのですが、演じるよりも考えることが好きな頭脳派の印象があります。
まだまだたくさん賢いトリックを生み出しているだろうなと思わせる、魅力的なマジシャンの一人です。

【Erdnase Unmasked edited by David Ben (2011)】
IMG_0046隠されているものを暴きたくなるのは性というものなのでしょうか。

カーディシャンのバイブル、1902年に発行されて以来100年以上版を重ね続け、現代クロースアップマジックの礎を気付いたダイ・バーノンが生涯研究し続けたという『The Expert at the Card Table』。その著者とされるS. W. Erdnaseなる人物の本当の正体は誰なのか?マジック界に七不思議があるとすれば、必ず入れられるであろうこのミステリーは今だはっきりした決着を見ておりません。

「S. W. Erdnase」という名前は偽名であって逆に綴ると「E. S. Andrews」という名前になる事実は1920年代には既に知られていたようで、マーティン・ガードナーが提唱した「Milton Franklin Andrews」説が有力でしたが、近年になってこの説は否定の流れになり、別の有力説が出てきているようです。

本書は、デビッド・ベン、リチャード・ハッチ、ハート・マクダーモットによる、それぞれのアードネスに関する調査報告のエッセイと、ジェイソン・イングランド、マーティン・ガードナーによる、『The Expert at the Card Table』の様々な版についての報告がまとめられた約80ページほどの本です。

これまでに様々な説で出ているようですが、今回読んでみてリチャード・ハッチの提唱する「Edwin S. Andrews」説はかなり説得力があるように感じました。しかしながら、この説もミッシングリンクがあってあと一歩というところのようです。

個人的には、結果的にアードネスの正体が実際に誰なのかということに関してはあまり興味はないのですが、それを追い求める人の執念というか熱意を読むのはとてもおもしろいです。そこまで惹きつけてやまないアードネスは、ダイ・バーノンがそうであるように、その著書とともにこれからも現代カードマジックの根底に存在し続けると思います。

ちなみに、つい最近出たばかりの本ですが、限定500部と書かれていました。価格は$35ほどです。

11月に読み終わった本

おはようございます。
佐藤です。

今年のものは今年のうちに、ということで昨夜に続いて、本の感想を書きたいと思います!

【Six Pack by Caleb Wiles】
IMG_0037mMLショッパーズでも扱っているDVD「Rematch(リマッチ)」のケイレブ・ワイルズが出した作品集です。

本に発行年が書いてありませんでしたが、おそらく今年の始めか去年に出されたものだと思います。

この作品集には、上記DVDに解説されている3手順のうち、"All Signs Point to Yes"が収録されています(ちなみに余談ですが、映画『トイストーリー』にも、この手順のモチーフになっている「マジックエイトボール」が登場していましたので、あちらでは割とポピュラーなおもちゃなのでしょう)。

その他に5手順入っており、計6手順ということで"Six Pack"というタイトルだと思います(またまた余談ですが、"Six Pack"は缶ビールなどが6個セットになっているものや、きれいに6つに割れた腹筋のことも指します)。

全体的に、はっきりと原案が辿れるような手順が多かったです。ただ、そのアレンジの仕方というか、彼なりのアイデアが面白かったです。技術的にはそこまで難しいものは少なく、分かりやすいオチのついた手順ばかりでしたので、実際によく人に見せているのだろうなという印象を持ちました。

クレジットもしっかりしていて、各手順でやりたかった狙いも書かれていますので読みやすかったです。
DVDを観て、ケイレブ・ワイルズのことが気になった方にはオススメです。

【Slow Motion Poker Deals by Lin Searles (1959)】
IMG_0045ギャンブリングデモンストレーションの手順が3つ解説されている小冊子です。

最初の"The Cross Shuffle Slow-Motion Deal"はフェローシャッフルの原理を上手く利用した手順なのですが、いわゆるフェローシャッフルを行いません(!?)。この「スローモーション」という演出で堂々と同じことを達成するところがアイデアの肝であり、面白いところです。また、原理的には『Expert Card Technique』などでも指摘され、同様の原理を使った手順もエルムズレイやピーター・ケーンなどが発表していますが、ここでは一歩踏み込んだ使い方がされていましたので、非常に参考になりました。

他の2手順も、技術的には全く難しくなく、ほぼセルフワーキングの手順でした。技法も得意なシールズだけに(作風から勝手に想像していますが)、おそらく意識してセルフワーキングの手順にしたような気がします。

ちなみに、芸が細かいなと思ったのは、冊子のデザインがBeeのようなカードの裏模様になっているのですが、それに合わせて、わざわざ本のコーナーが角取りされていることです(冊子の右側のコーナーです)。

そして、この小冊子で一番面白いと思ったのは、ギャンブリングデモンストレーションに対する彼の考え方です。一瞬その通りと思いかけた後、ん?待てよ?といろいろと考え込んでしまいました。おそらくみなさんにも興味ある考察だと思うので、以下に引用します:
The audience will give you credit for some remarkable card handling. You must not, however, claim that you are actually dealing seconds, bottoms, thirds, or centers. That would be like doing a mental effect and claiming that it is real mindreading. The code of ethics that magicians have adopted for mental and spiritualistic effects applies also to gambling effects.

10月に読み終わった本

こんばんは。
佐藤です。

9月に読み終わった本はありませんでしたので、今回は10月に読み終わった本をご紹介します!

【Cardician by Edward Marlo (1953)】
画像 001本著は、エド・マーローが書いた数え切れない書籍・冊子の中でも代表作のひとつでしょう。
現在カード・マジシャンのことを「カーディシャン」と呼ぶようになったのも、マーローが名付け親です。

わたしが読んだのは、1987年の第8版です。何よりも、初版が1953年ということに驚きです。というのも、現在の視点で見ても、質・量ともに圧倒的だからです。"Penetration"や"Oil & Water"、"Mental Reverse"などマーローがポピュラーにしたプロットが詰まっています。

本の構成としては、それ以前に雑誌に発表していたものを再録している章がはじめにあり、その後、1つの技法の解説の後でそれを使った数手順の解説、という流れがメインです。マーローの作品解説の特徴として挙げられるのが、バリエーションの多さです。ある現象を解説するのに、それを達成する方法が「第1法」、「第2法」、「第3法」…と連なっているのです。ともすれば、読んでいる側はいい加減うんざりしてしまうのですが、これこそがまさにマーローがあらゆる方法を「とことん考え抜いている」証拠なのです。

何も考えずにとにかく思いついたものを残さず発表しているように見えますが、解説されている方法のひとつひとつは実に磨き上げられているのです。たまに、「えっ!?これでいいの?」というシンプルな解決策になっているものもありますが、これも考え抜かれた末に思いついたもので、実際に言われなければ思いつかなかったであろう方法もたくさんありました。

それにしても、マーローという人の評価はマジック界でもとても難しいらしく、わたし自身もマーローに対する印象は二転三転しています。最初はあらゆるアイデアとともに名前を聞くのですごい人だというイメージ、それからいろいろ調べていくにつれて、それが実は元々違う人のアイデアでマーローはちょっといじっただけだというようなことを知ってがっかり・失望と続きます。しかし、最近はそこからさらにもう一度あらためてマーローはすごいという評価に変わってきました。「ひらめき」型の天才ではなく、「努力」型の天才と言えるでしょう。

【New Self-Working Card Tricks by Karl Fulves (2001)】
画像 002
実際に写真に写っているのは、Karl Fulvesの「Foolproof Card Tricks」というペーパーバックの本で、この本はそれより以前に刊行された「New Slef-Working Card Tricks」と「More Self-Working Card Tricks」の合本になっています。そして、前半の「New〜」の方を読み終えたというわけです。

詳しく調べていないのですが、おそらくはKarl Fulvesが自費出版した小冊子などから抜粋して、それをやさしくアレンジした作品群なのだと思います。

平均的なマジシャンだったらここはこうするだろうなというところが、大胆な工夫によって技術的負担がほぼゼロになっており、アレンジの苦心の跡が窺えます。その分、一部で不自然なハンドリングや野暮ったい部分を感じるのはある意味でしょうがないところだと思います。

とは言っても、作品は素晴らしいですし、原理的にも賢いものが数多く載っていますので、宝探しのようにお気に入りの作品を探すのも楽しいかもしれません。また、不自然とは言っても、マジシャンからの視点であって、きちんとセリフや演出でカバーされていますので、マジックをしない人には何ら問題ない部分も多いと思います。

そして、(先祖返りの方向になる可能性はあるとは言え)自分なりに作品をアレンジすれば、きっとレパートリーになるような作品が見つかるはずです。

技法を使うことにあまり抵抗のないわたしには、こういったやさしくアレンジする方法もとても参考になりました。

価格も安く、国内でもネットで手に入りやすいので、オススメです。また、英語も平易ですので、マジックの洋書を読み始めたい方にもいいかもしれません。

8月に読み終わった本

こんにちは。
佐藤です。

今年も残すところあと1ヶ月となりまして、今年のものは今年のうちに、ということで読み終わった本の感想を久しぶりに書きたいと思います。

2011101013150000【Classic Tackler (Phil Goldstein, 1976)】
 計10手順が解説されており、『FOCUS』(邦訳版「パケット・トリック」)に再録されたものが5つ、未収録のものが5つでした。
さらに言うと、再録されたものも、ハンドリングや演出などが微妙に異なっているものがありました。

 タイトル通り、カードマジックのクラシックなプロット(エースアセンブリ、コレクターズ、フォロー・ザ・リーダー、オイル&ウォーター、ツイスティング・ジ・エーセス、アンビシャス・カードなど)に取り組んだというテーマの作品集です。ただ、『FOCUS』にも再録されている"Counter Revolution"は、「ツイスティング・ジ・エーセス」の発展形ということで解説されていますが、実質的に"Reset"とほぼ同じプロットで、さらには"Reset"よりも発表が1年早いといったように、当時としては新鮮な、それ自身が新しいプロットになるような手順も解説されているというわけです。

 全体的に、見た目のすっきりさを優先させた結果か、手法に凝った手順構成になっている印象がありました。



2011101013150001【On The Up and Up (Ken Krenzel & Richard Kaufman, 1978)】
 「カードマジック事典」にも載っており、レギュラーデックでできるビジュアルなライジングカードということで、このライジングカードの方法は今となってはスタンダードな手順となっている感があります。これは、雑誌『パビュラー』に発表されたフレッド・ロビンソンの"Ambitious Riser"というムーブが元になっているのですが、奇妙なのはそのわずか2ヵ月後に同雑誌でエリック・メイソンがクレンゼルとほぼ同じ方法を発表している("Arise Comrades")のに、一切クレジットがないということです。

 ロビンソンの名前は触れられているのですがメイソンの名前がありません。あとがきでカウフマンがJerry Deutschというマジシャンに、ロビンソンのクレジットを教えてもらったと書かれていますので、邪推するに、風のうわさを聞きつけたか、あるいは誰かからロビンソンのムーブを見せられたクレンゼルがあれこれといじり、それを見たカウフマンが冊子にして出そうと提案。そうこうするうちに、元のムーブがロビンソンのだと分かりクレジットしたが、まさかほぼ同じハンドリングが発表されているとは知らなかったと。おおよそこんな感じなのではないでしょうか(あくまでも推測です)。それにしても70年代においてまだアメリカ(カウフマン・クレンゼル)とイギリス(ロビンソン・メイソン)でディスコミュニケーションがあったのかもしれませんが、こういう事例を聞くたびにイギリスのマジシャンはとことん報われないなと。クレジットでは大抵アメリカ人が全部持っていって、損をするのがイギリス人な気がします。

 とは言え、本冊子では単に1枚をライジングさせるだけでなく、複数枚を連続して上げる方法、半分まで上げたカードを変化(裏→表、あるいは別のカードへの変化)させる方法の解説、さらにはこれを使ったプロットの提示などもあって興味深かったです。

2011101013150002【Totally Out of Control (Chris Kenner, 1992)】
 "Totally Out of Control"と"Out of Control"という2冊が1冊になった合本という体になっており、半分まで読んだところで今度は本をさかさまにして反対側から読むようになっていたり、ジョーク・クイズなども書かれてあって、本自体が遊び心で溢れています(読みやすいかどうかは別として)。
 カード、ロープ、コイン、輪ゴムなどを使った、ビジュアルでインパクトのあるマジックが解説されており、マジョリティに受けそうな正統派という印象です。何と言うか、「クセがない」というのが一番しっくりきます。テーブルホッピングをしていた経験が活かされており、手法も実用的で無理なく懲りすぎておらず、それでいてテンポ良く不思議なことがしっかり起こります。「ピュアリスト」にはその解決法に納得いかないだろうと思う手順もいくつかありますが、その分ハンドリングがクリーンになっています。そっちのやり方を選んだ辺りからも、「実践派」であることがうかがえます。

 また、時折書かれている「よく見かけるこういう手つきはするな」といったハンドリングのワンポイント・アドバイスからは、彼の美的センス、あるいはこだわりが感じられます。
 
 また、今やフラリッシュの基礎中の基礎になっている感もある、シビルカット(Sybil Cut)、そしてその発展形である"The Five Faces of Sybil"も載っています。
 そして、「ブーム」(というか完全に定着していますが)となっている、いわゆる「スリーフライ」("Menage Et Trois")、そして手のひらを上に向けた状態でのビジュアルなコインズ・アクロスなども解説されています。この2つはコンセプト自体は昔からあるものの、一躍ポピュラーなプロットとなったのは、おそらくクリス・ケナーや彼と親しいホーマー・リワグなどがかなり貢献しているのではと思います。

 現代クロースアップマジックの今の流れにおいて、クリス・ケナーの功績はかなり大きいのではないでしょうか。
 ちょっと探してみた限りだと、こちらの本も絶版になっているのか、販売しているところは少ないようです(価格は$45ほどのようです)。

7月に読み終わった本

こんばんは。
佐藤です。

大きな反響をいただいた「The Psy Deck」も一段落したので、
久しぶりに読んだ本の感想などを。

2011100317040001【Card Control (by Arthur Buckley)】
1946年に出たアーサー・バックリーの本で、今ではドーバーからペーパーバックが出ていて1000円以下で簡単に入手することができます。前半は技法の解説、後半はオリジナル作品が40手順載っています。技法は、その時代の他のマジシャンのもの(バーノンのマルチプル・シフトなど)やバックリーのオリジナルもありますが、ギャンブラーのテクニックが多めの印象を持ちました。大半は今となってはスタンダードになっていてよく知られているものばかりですが、中には他の本では見かけない珍しいテクニックもあったので、面白かったのですが…。
もしかすると今まで読んだ中で一番読みづらかった本かもしれません(現に、1、2個ほど解読不能で諦めたものがあります)。前半の技法解説では、写真にくっきりとした輪郭線が付けてあり、その時代にしては分かりやすくなっていると思うのですが、後半の手順解説にはその写真すらほとんどなく、かなり理解に苦しみました。さらに、文章自体も、読んでいる人を置いてけぼりにするような、「分かっている人が解説してしまうとこうなる」の典型的な解説でした。当人にとって当たり前の動きなので分かりきっているものと錯覚してしまいがちなところが、本人が執筆する際の、共通する弊害の1つと言ってよいでしょう。あるいは、実践派の印象を受けましたので、元々文章を書きなれていないのかも。内容は素晴らしいので、歴史的な資料としては持っておいて損はないと思います。

2011100317040000【Unexplainable Acts (by Richard Kaufman, 1990)】
ギャリー・カーツの作品集です。主にコインマジック、次いでカードマジック、あと数手順ほどそれ以外のプロップを使ったマジックという感じです。カナダ繋がりでしょうか、ジェイ・サンキの作品からインスパイアされたものがちらほら。彼の印象を一言で言うと「smart」、あるいは「sophisticated」ですね。とにかくおしゃれでカッコよく、テクニカルなことをさらりとやってのけます。もちろん、あの顔立ちや背の高さなどの見た目、また振付師だったことに由来する立ち振る舞いからもその印象があるのですが、今回本を読んでみて1つ発見だったのが、セリフがまあおしゃれなこと。ウィットに富んでいて、彼が言ってもクサイせりふになってしまいそうなところを、スッとギャグで落としているというバランスの取り方が絶妙です。この人はよく自分のキャラクターを分かってますよね。
手順自体はテクニカルなものが多いので、割とそっち系が好きなわたしは十分に楽しめましたが、それ以上にセリフが勉強になりました。こういう気の利いたセリフが似合うマジシャンになりたいものです。わたしはコインマジックをほとんどやらないので詳しくは分かりませんが、ハンドリングは非常に現代的に感じました。今の流れに寄与した1人なのではないでしょうか。ウィットの利いたオシャレな雰囲気を目指す人にはオススメです。
残念なのはこの本が現在絶版ということです。再版が望まれます。

6月に読み終わった本

2011062516010001【Scattershot by Phil Goldstein (1977)】

フィル・ゴールドスティンのカードマジック作品集。
全20作品のうち、8作品が『FOCUS』(日本語版『パケット・トリック』)に再録されています。

再録されなかった作品のうち、「なるほど、確かに納得」と思うものもあれば、「どうしてこれが?」という良い作品も。

特に“Palm Off”、“Fraud Collectors”、“Second Fraud”は再録しても良かったのではと思います。
おそらく編纂に際して見直した時に、ハンドリング的に気に入らなかった部分があったのでしょう。
あと、その時代には価値ある手順でも今となっては…、という思いももしかしたらあったのかもしれません。

どれも読みやすい手順(うんちくだの基本技法の解説だのがないので、手を動かしながらスムーズに読める)で、手順自体も現象ははっきり、ハンドリングはすっきりでした。

ちなみに、表紙に本人とおぼしき人物を発見しました。
この当時から、もうこの髪型押しだったんですね。

2011061211180000【Underhand Shuffle by Steve Beam】
『Semi-Automatic Card Tricks』シリーズを出しているスティーブ・ビームの小冊子です。

手順も解説されてはいますが、メインはフォールス・シャフル1種です。これについて、細かいバリエーションが書かれており、さらにこれを使った手順が数種類載っているという感じです。

見た目はオーバーハンド・シャフル・タイプで、本人の動画を見ると、さすがに上手いです。
確かに、「オーバーハンド」よりもこちらの「アンダーハンド」の方が、技術的な負担は減っているのかなという気が若干しました。テーブルを使わない場所でマジックをする人には、カジュアルに見えるのでオススメです。

本人のところから買うと、20ドルのようです。







2011060318020000【Dai Vernon: A Biography -artist, magician, muse, 1894-1941 by David Ben (2006)】
これは文句なしに素晴らしい本です。

バーノンが生まれてから、1941年に建設現場から川に落下して全身を骨折する大事故を起こすまでの期間が、デビッド・ベンの「読ませる」文章で語られています。

ニューヨークに「上京」した際のエピソードや、幻のセンターディールを追い求めた先に出会ったアレン・ケネディーとのエピソード、ハーレクイン・アクトから他のマジシャンとの交流、当時のマジック業界の時代背景など、今まで「点」として知っていたものが、バーノンを中心として「一本の線」で語られているのを読んでいると、まさに次々とパズルが完成していくがごとく、断片的な情報が頭の中ですっきりとつながっていくのを実感しました。

また、ダイ・バーノンと語られることの多いチャーリー・ミラーやサム・ホロウィッツ、カーディーニやジョン・スカーニー、ドクター・デイリーなどとの関係性も非常によく分かる内容でした。というか、今まで対等な関係性(年代等)だと思っていた認識が一気に変わりました。

わたしの場合は、1日約10ページのペースで読んだので、3日で1章、全部読むのに丸々1ヶ月強かかりました。

この伝記を、辞書を片手に読もうという方にティップを1つ。この本のために、一度引いた単語をリストアップしていくと、楽です。最初の方から次々と聞いたことのない単語が出てくるのですが、これが後半になっても何度か出てくるからです。「あれ、この単語この前調べたけど、何だったかなー」ということが多々ありました。単語リストを作っておくと、後半になるにつれて、どんどん楽に読み進めるようになるはずです。

5月に読み終わった本

2011060318020001【Handcrafted Card Magic by Denis Behr】
フリッキング・フィンガーズのメンバーの1人、Denis Behrの作品集です。
こういう作品集を読むと、「あぁこの人本当にマジック好きなんだなぁ」と思ってしまいます。

彼は、バリバリのスライハンドから、ガチガチの数理まで、守備範囲がハンパなく広いです。

この本でも、スライハンドあり、メモライズドスタックあり、両方の組み合わせありとバラエティに富んでいます。
ただ、どちらかというと、メモライズドスタックを使っている人にとって有益な情報が多いように感じました。

テクニカルレベルうんぬんではなく、カードマジック上級者向けといった感じです。

本人から直接買うと、価格は30ユーロです。




2011062516010000【The Card Expert by Lynn Searles】
「カニバルカード」や「アルティメット・エーセス」などの面白いプロットを考案しているリン・シールズ。
雑誌には結構寄稿しているのかもしれませんが、彼の作品集というのは珍しいと思います。

初版は1938年なのに、読者がアードネスの『Expert at the Card Table』を読んでいるものとして
解説しているところが個人的にはツボでした。

アードネスの本は、1902年発行なんだから別にそんなおかしいことじゃないじゃないかと思われるかもしれませんが(そう思う人もまれとは思いますが)、
バーノン(彼にとってアードネスの本は生涯のバイブルでした)がニューヨークに移った1910年代半ば、アードネスの本を読んでいるマジシャンはまれでした。
あの取扱説明書のような仔細な解説は、当時誰も読んで理解できなかったのでしょう。

さらに、リン・シールズは1914年生まれ、15歳でセミプロとなり、当時24歳というわけです。

そんな彼がアードネスを読んでいることを「常識」とするあたり、よほど彼が傑出していたか、
あるいは、いわゆる『$20マニュスクリプト』を出してアンダーグラウンドで絶対的な存在となっていたバーノンの影響がそれほどまでだったのか。

本の構成としては、前半が技法の解説、後半が13種類の手順解説です。

ロイ・ウォルトンの本を読むと、ウォルトンもシールズの作品が好きだったような印象を受けます。
そんなわけで、ウォルトン好きのわたしも、シールズの作品はテイストが近い感じがして好きです。
何と言うか、一言でいうとシャープなんです。切れ味鋭く、回り道が一切ない。

特に、"Master Dealing"という作品は、観客によくシャッフルしてもらったデックをそのまま使い、
観客の指定したプレイヤーにウィニングハンドを配ってみせるという作品なのですが、文章だけのわずか1ページで解説されているこの作品のなんと感動することか。

シンプルなのに、どうして今まで思いつかなかったんだという解決法に出くわすことがあります。
これだから、昔の本を読むのは止められません。

他にも、フォールス・ディーリングやギャンブリング・デモといったギャンブリング寄りのものが多いです。
Profile
起業家支援ツールです
SOHO・起業家を成功に導く電子書籍販売ツールを提供・・インフォカート
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ